「何やってんの?」と言われたスプレッドシート化。現場の抵抗を乗り越え「あの備品どこだっけ?」をゼロにした話

道具・仕組み化(DX)

はじめに:現場の「探す時間」は一番のドブ捨て

「あの金型に使う専用の備品、どこの棚に置いたっけ…」 「棚を上から下までガサガサ探して、10分もかかった…」

現場で作業をしていて、こんな経験はありませんか? これはまさに、1円も生み出さない完全な「無駄」です。

要領が良いベテラン社員は「あそこにあるよ」と頭の記憶だけでサッと出したりしますが、人間の記憶ほど当てにならないものはありません。担当者が休んだら誰も場所が分からなくなるし、新人や不器用な人は探すだけで疲弊してしまいます。

「誰でも同じクオリティ」「誰が作っても同じ品質」 これこそが、工場でモノ作りをする上で最も大事なことです。その「モノ」を作る前段階の準備(段取り)に無駄な時間を割いている状況は、本当に勿体無いと感じていました。

そこで私は、現場で「棚番一覧×スプレッドシートで一瞬で検索できる仕組み」を作りました。

しかし、その道のりは決して順風満帆ではありませんでした。

1. 「何やってんの?これ作る意味ある?」ベテランからの冷ややかな視線

仕組みを作っている最中、社歴の長い先輩からこう言われました。

「何やってんの? これ作る意味ある?」

年配のベテラン社員にとって、頭の中の記憶や体で覚えるのが当たり前。「仕事はやりながら覚えていくものだ!」という感覚があるため、「パソコンやスマホで探す」という発想自体、理解するまでに時間がかかるのです。

さらに現場では、画面を操作している姿は「仕事をサボってスマホやPCをいじっているだけ」と誤解されやすいという大きな壁がありました。特にベテランの方々からの見栄えは決して良くありません。

どれだけ現場を良くする素晴らしい仕組みであっても、自分の役割を果たさずに作業していたら、ただの「サボり」と言われてもぐうの音も出ないのは事実です。

2. 泥臭い工夫:やるべきことを完璧にやって、空き時間で進める

そこで私が徹底したのは、「泥臭い立ち回り」です。

  • 本業(やるべき作業)を完璧にこなして隙を見せない
  • 作業の手が空いた数分間や、準備の合間を狙ってコツコツ入力する

「仕事は仕事」として責任を果たした上で、空いた時間を見つけて愚直にデータを入力していきました。

現場の理解を得るために一番必要なのは、最新のITスキルではなく、「やるべきことをやった上で現場を良くしようとする泥臭い姿勢」でした。

「なんでこんな便利なことが分からないんだ」というこちらの目線と、「なんで仕事をせずにPCやスマホばかりいじっているんだ」というベテランの目線。言っていることは違えど、本質的な部分は同じです。

人間にとって「分からないこと」は怖いものです。だからこそ、相手を突っぱねるのではなく、お互いに理解しようとする努力を怠らないこと。一方的に理解を求めるのではなく、自分から歩み寄ることが何より大事だと実感しました。

3. 仕組みの全貌:誰でも0.1秒で検索できる「棚番アドレス」

本題に戻り、実際に作った仕組みの全貌をご紹介します。やったことは非常にシンプルです。

  1. 棚にアドレスを振る(「A-1」「B-3」などテープで可視化)
  2. スプレッドシートに一覧化(【金型名/製品名】【備品名】【保管棚番】を入力)
  3. 検索機能(Ctrl+F等)で一発検索

現場のPCやスマホから製品名を入力すれば、「〇〇製品 > B-2の棚」と0.1秒で答えが出る状態を完成させました。

4. 運用開始後、「あれ便利だね」の一言ですべてが報われた

実際に運用を始めると、現場には劇的な変化が起きました。探す時間がゼロになったのはもちろん、何より嬉しかったのはあの「作る意味ある?」と言っていた先輩の反応でした。

現場で実際にシートを使ってみた先輩から、ぽつりとこう言われたのです。

「…あれ、便利だね」

理解されるまでに時間はかかりましたが、泥臭く諦めずに作って本当に良かったと思えた瞬間でした。 (内心では「ほら見たことか!」と叫びましたが笑)

まとめ:自分の記憶を信用するな、泥臭い仕組みを信用しろ

新しい仕組みを現場に入れるとき、最初は必ず反対や違和感が生じます。

ですが、「やるべき仕事をしっかりやった上で、泥臭く仕組みを作る」という姿勢があれば、最後は必ず現場の味方が増えていきます。

人間の記憶に頼るのをやめて、仕組みに頼る。

もしあなたの現場でも「探す無駄」が発生しているなら、周りの目に負けず、小さなスプレッドシートから現場を変えてみませんか?

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